「ひとのこと」に思いを馳せる (blog by HR professional)

日系、外資系企業で人事 (Human Resources) のプロフェッショナルとして「ひとごと」に向き合い、人の感情を受け止め、人の成長に感動してきました。その視点を通して、人と組織の成長に思いを馳せる「ひとごと」のごった煮ブログ。二児のパパでイクメン5級の修行中。

グローバル企業の組織的トレンド ー 地域統括機能(リージョン化)その2 - Regional Function vol.2

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複数の国をまたがる地域統括機能(リージョン機能) が出現することで、それぞれのローカルのマーケット(多くは国単位)で起こることは何か?意思決定と組織の2点から考えて見たい。

 

ビジネス上の意思決定に関する示唆としては、まずローカルの裁量が減る。地域統括機能の決まった方針に沿うという点で、地域的に遠い本社の方針よりも明確かつ強い影響を受ける。物事を進めるとき、これまで以上に戦略に添って物事が進んでいるか、定期的な報告と調整が求められるようになり、コントロールが確実に強くなる。

 

一旦方向が決まると、ローカルはその実行力とスピードを問われる。方向性にブレがなければ、展開するスピードは早くなるから、ハマれば成果が早く出る。だから方向性が明確ならば、必ずしもローカルにとって悪いことばかりではない。

 

一方で良く聞かれる「マーケットの特殊性を考えると日本は特別」という、本社相手に通用した理屈が通りにくくなる。アジアにおける日本市場の魅力が相対的に低下していることが、日本はアジア地域の一部、とする扱いに拍車をかけていることにも関係している。

 

もう一つは組織の層が本社との間に一つ増え、しかも機能別にガバナンスを効かせる体制になる事。

いわゆるマトリックス組織による統治によって、一つの国でビジネスを展開する企業全体、という考えだけでなく、機能ごとに例えばマーケティングの共通ブランディング戦略、サプライチェーンのグローバル流通網、ファイナンスの地域全体の予実管理の方針など、直接リージョン機能の影響を受けることになる。

 

言い方は悪いかもしれないが、企業を人に例えると、「人格」を有する人の意思や行動に働きかけると同時に、それぞれの臓器(Organ) にも機能の効率性と働きの向上を課して、パフォーマンスを高めるといったところか。

全機能を余すところなく活用して、能力を最大限引き出す考え方とその実現については、その功罪はともかくグローバル企業は、日系企業よりも一日の長はあるように思う。

 

そしてこれらの機能を支えるのが、そこで働く人材である。このリージョン組織がシェアードサービス(オペレーション機能)でも、センターオブエクセレンス(企画機能)であっても、アジアのどこかの拠点にできるということは、そのリソースを活用することを前提に各国のリソースが決まる。つまるところ、リージョン組織の導入前よりも人材を減らさないと理屈に合わなくなる。

 

少々マニアックな話になるが、職位の等級(ランクのようなもの)が下がるケースも出てくる。 間に一つ階層が増えれば、その下は意思決定と責任の範囲で限定させる方向で影響を受けるから、それぞれの国で働く人たちは、裁量が減った実感を持つこともあろう。一方でグローバル企業の一員として、ビジネスに貢献しているという誇りも持てるかのしれない。リージョン機能の導入による人材面での示唆については、別の機会で話をしたい。

 

まとめると、リージョン機能の導入により日本の独自性を発揮できる部分は減るが、活用できるリソースと努力次第で効果的に成果を挙げることは可能ではないか、と考えている。

むしろローカルで大きな裁量を持ったところでマネジメントが優秀でなければ、正しく使えない。フォーカスのない仕事や仕事のための仕事が作り出され、現場が疲弊するだけである。そしてリージョンから降りてくる方向性がローカルの実状に対して納得できるものでなければ同様に、現場は不満や違和感を持つし疲弊する。 

 

要はリソースを使う人によって成果が決まるのであって、リージョン組織の有る無しには関係がない。実行力に大きな影響を及ぼす現場の士気に関わる点は、トップマネジメントのコミュニケーションによる人心掌握がポイントとなる点は今も昔も変わらない。

 

ただグローバル企業の中で生きるということは、その抗い難い流れに自分のポジションや責任が翻弄されることを覚悟する必要があるし、どうせならその変化を受け入れて時には楽しんで泳ぐくらいの心持ちでいた方が、身の処し方としては、楽なのかなと感じるこの頃です。